手術・麻酔関連情報

手術の流れと術後管理
手術前から手術終了までの動物の状態や麻酔をどのように管理するかについて解説しています(周術期管理)。具体的には(1)麻酔前の動物の状態の評価から始まり、(2)麻酔の導入、(3)手術中の麻酔管理、(4)覚醒(意識の回復)、(5)術後管理という流れになります。
(1) 動物の評価
手術前の動物は今から行われることに対して理解するすべを持っていません。普段はフレンドリーでも、手術直前になると過度に緊張して心拍数や呼吸数が異常に増えたり、発熱したりする場合もあります。
術前検査以上にその子の性格や心理状態を把握することが大切で、それを麻酔前と術後の管理に反映できるよう努力します。
場合によっては飼い主様に終始付き添っていただくことがリスク回避の最大の方法になるかもしれません。
(2) 麻酔導入
ここからは実際に手術室に入って行います。まず麻酔前投与薬を投与します。この薬剤は麻酔に入る前の動物の不安感や恐怖感を取り除き、さらに術中術後の疼痛を抑えるためのものです。使用する薬剤の種類や組み合わせは症例によって選択します。皮下注射か静脈注射で注入します。
次に麻酔導入薬を投与するまでの間、マスクを使って十分な酸素を嗅いでもらいます。そうすることで手術中の無呼吸状態に耐えられる時間が延長できるからです。導入薬の種類や動物の状態によって手術室に入る前にICUにて酸素化していただく場合もあります。
麻酔導入薬は意識を消失させることを目的とします。ほとんどの場合静脈注射薬を使用し、意識消失が確認できたら速やかに気管内へ気管チューブを挿管して安定した酸素吸入を確保します。
麻酔維持には吸入麻酔薬を用います。気管チューブから酸素とともに吸入し、手元のダイアルでその濃度を調節し麻酔深度を調節します。
(3) 手術中の麻酔管理
必要な剃毛や消毒が済めば手術開始です。手術中は麻酔担当者が五感によって麻酔の深度や痛みの程度をチェックしながら、モニター機器を装着して目に見えない体内の電気信号やガス濃度などを調べながら進めて行きます。心電図、血圧、呼吸数、SpO2、EtCO2、麻酔ガス濃度、体温などがそれにあたります。
(5) 術後管理
手術室から回復室に移動します。さらに酸素化や保温が必要な場合はICUに移動します。
急な覚醒によりパニックになったり捻挫や咬傷の可能性がある場合は、安静化するまで麻酔担当者や付き添っていただいている飼い主様に保定していただくことがあります。
移動後は、数分おきに呼吸状態、粘膜色、心拍、体温などを確認して動物の状態を観察し、補助なしでの起立もしくは歩行出来るようになるまでこれを続けます。特に麻酔から覚めることによる精神状態の変化や疼痛の有無に注意します。
手術の内容にもよりますが、例えば避妊や去勢手術の場合は術後5~6時間で自宅での静養に移ることになります。相談により入院管理をすることも可能です。
手術/麻酔関連情報 手術・麻酔の記録管理
安全な手術管理を行うためには、麻酔中に変化するバイタルサインを正確に把握し記録する必要があります。麻酔記録を行うことで動物の状態を再確認でき、薬剤の経路、投与量、時間、麻酔深度の調節時間などを併せて記録することで、それに伴う生体反応が予測しやすくなります。また今後の麻酔リスクの管理のための参考資料にさせていただいたり、医療事故が発生した場合にはその原因を探るための情報源になることがあります。